脾の作用

のいちばん重要なことは、脾は西洋医学的な脾臓とは異なっていることです。西洋医学的な脾臓はあまり有名な臓器ではないですが、赤血球の生産などに関わっている器官です。しかし、東洋医学的な脾は西洋医学で言うところの膵臓に位置するもので、消化吸収などに関わっています。ちなみに、この様に西洋医学と東洋医学で脾が異なるようになったきっかけは、杉田玄白らがターヘルアナトミアを翻訳したときに、脾という漢字はは下卑たように見えるという理由で膵臓と訳を変えたことに起因すると言われています。
脾の作用は運化作用、昇清作用、統血作用の3つと、胃の消化作用の補助です。まず、運化作用とは、胃が消化した飲食物から水穀の精微を吸収し運搬する作用です。
昇清作用とは、吸収した水穀の精微を上焦まで運び上げる作用であり、運化作用に近しい部分があります。上焦に引き上げられると、肺で取り込んだ精気と混ざって宗気となり、肺の宣発作用によって全身に回ります。このときに、脾が吸収した水穀の津液も肺の作用で巡っていきます。このように、脾が十分に機能しないと気血津液の原材料が手に入らないので、「脾は後天の本」と呼ばれています。ちなみに、脾の昇清作用に失調を来たすと水穀の精微は内邪となって全身に悪影響を与えます。これは、邪について学ぶときに詳しく説明します。
統血作用とは血液が脈外に出ることを防ぐ作用のことです。この機能は脾の気が担っているので、脾気虚になると出血が増えるというのが特徴ですね。
「涎は脾の液」「華は唇四白にある」「脾は口に開竅する」と言われるように、脾は口に大きく関係していることがわかります。特に口舌が味を理解するのは脾の機能です。そのため、味が感じられなくなったら脾が原因である可能性が高いことは覚えておいたほうがいいです。また脾の変化は肌肉に現れやすいとされます。それは脾が吸収した水穀の精微を肌肉に蓄え、必要なときに帰結に変化させるためです。そして、脾は胃の消化作用に大きく関わっているので、消化に不調が出た場合は脾が原因である可能性が高いです。

updatedupdated2024-11-072024-11-07