肺の作用

回は肺の作用についてみていきましょう。東洋医学における肺の作用は、宣発、粛降作用、順調水道の制御の3つであります。そして、宣発、粛降作用を組み合わせて呼吸をしていると考えられています。東洋医学と西洋医学で肺についてはほぼ同じ臓器を指していると考えられていますが、東洋医学のほうが肺に求める作用が多いです。東洋医学における肺を表す言葉として「人身のふいご」はまさにぴったりでしょう。

 まずは宣発、粛降作用について見ていきましょう。宣発は上昇や発散という意味の言葉で、脾が吸収した気を肺が全身に巡らせているのは脾の作用でも少し触れたと思いますが、その作用そのものです。。ただ、宣発作用はそれだけでなく、体内の濁気を呼吸を用いてた以外に放出する作用もあります。また、粛降作用というのは、自然界の清気を吸収して下方に運ぶ作用のことで、宣発作用と相反する力ですね。そしてこの2つの作用が合わさって呼吸が生まれているのです。
 次に順調水道についてみていきましょう。肺は脾が吸収した津液を一時的に蓄え、全身に巡らせる機能を持っています。イメージとしてはマンションの水槽のようなものだと思ってほしいですね。この全身に巡らせる機能も宣発作用と考えられることもあるし、津液に衛気を載せて宣発していると言われることもあります。それぞれ学派によって見解が違うこともあるので、あまり気にしないでいきましょう。
 肺の印象としては、心が血の循環を行っているように、肺は津液と気を循環させているポンプの一つでありつつ、濁気の交換を行っている便利な器官ですね。

最後に肺と関連性のある部位を見ていきましょう。「涕は肺の水」「体は皮に合し、華は毛にある」「肺は鼻に開竅する」と言われるように、鼻と皮膚に関連しています。肺の特徴的な症状は鼻水と咳、痰等があります。皮膚については、肺は衛気を循環させているので、防衛能力が落ちて外邪への耐性が落ちるという方向性の症状が出やすいことに注意しましょう。また、咳や痰は様々な原因から出ることがあるので、咳が出たから肺に原因があると考えるのは早計になることが多いです。咳と痰から的確な原因にたどり着けるようになれば十分な知識がついたと言えるほどなので、最初の頃は咳や痰を無視して症例を検討するのもありだと思います。

updatedupdated2024-11-072024-11-07