肝には蔵血と疏泄の2つの作用があるので、肝の失調で現れる症状は2つで共通の症状もあれば、異なった症状もあります。まずは先に2つで共通して現れる症状を見ていきましょう。
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心の乱れ イライラ
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津液の停 湿や痰が生じる
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目が疲れやすい
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爪が脆くなる
よく起こるのはこの四症状で、どれも肝と関連性の高い臓器や器官の症状ですね。目や爪に症状があるとき、気分によって症状が移ろう場合は積極的に肝の異常を注視しましょう。
では蔵血作用に影響が出た時の場合を見ていきます。
肝の蔵血作用に失調をきたすときは、主に肝血不足という状態で、肝血虚という病態に陥ります。
肝血虚証 肝の造血作用の低下で血量調節ができない状態
眼精疲労 顔色萎黄 四肢のしびれ 爪の脆い 爪や唇の血色低下 舌質淡(1) 脈細(2)
血の生成不足や多量出血 慢性的な肝の疲労など
心血虚(3)や腎精不足をきたすこともある
次に肝の疏泄作用が低下した状態に起こる症状を見ていきます。主に肝の疏泄が乱れると肝で気滞になり、肝気鬱結という病態に陥ります。更に悪化すると肝火上炎という状態になるので、両方見ていきましょう。
肝気鬱結
肝の疏泄作用が低下して、気が停滞した状態
精神抑うつ 脹痛(4) 胸脇苦満 脈弦
ストレスや長年の塞ぎ込んだ気分で気が停滞した状態
悪化すると肝火上炎になる
胃や脾の機能低下や不和によっる食欲低下をきたす
肝火上炎 肝に停滞した気が熱を帯びて上行した状態
頭痛 顔面の紅潮 耳鳴り 口渇 舌質紅 不眠 脈数弦
陽である火が強くなると陰が弱り、肝陰虚になる
ここからは、肝血虚や肝火上炎がさらに悪化した状態、肝陰虚と肝陽化風を見ていきます。どちらも少し珍しい症状ですので、あまり意識して覚えようとしなくても大丈夫ですが、このような症状に陥ったらかなり危険ということは理解しておいてください。
肝陰虚 肝血虚と虚熱陰虚が併発した状態
めまい 目の乾燥感 手足のひきつり 一般的な陰虚症状 脈細数
肝気鬱結や肝血虚、腎陰不足(5)の悪化した状態
肝陽化風 肝陽の上行と肝陰虚が併発した状態
めまいやふらつきなどの上部の熱症状 痙攣 舌質紅 脈弦細数
肝陰虚や肝腎陰虚(6)が悪化した状態
肝の症状はやはり目や爪に影響が出やすく、その影響は腎や心に転移しやすいです。結構気分に左右される症状も多いので注意しましょう。また、症状は様々な臓器で同時に起こると原因を特定しにくくなるが、目や舌診、脈の情報などを用いて原因の臓器を絞り込めれば特定しやすくなりますよ。
(1): 東洋医学では舌診を重視する 舌質が炎症を起こしている状態 舌質紅は舌質が赤い状態
(2): 東洋医学では脈も様々な状態を表すとされる 脈が弱々しい状態 弦脈は脈が跳ねるような状態 数脈は脈が早い状態
(3): 心の血が不足した状態 詳しくは心の不調参照
(4): 張ったような痛み
(5): 腎の不調参照
(6): 腎の不調参照