心の基本作用は血を司ることと神を蔵すことである。血を司るとは、心は絶えず拍動して血を血脈中に送り込み、全身に血を届ける作用のことである。血は生命活動で欠かすことのできない要素の一つのため、「心とは生の本」[素問[六節蔵象論篇]より]と言われるように、心音活動が停止すると生命が絶たれてしまう。血を運搬するだけでなく、心には血を赤化させる作用があり、これは心の熱が働いているからである。またここにこそ、心の温煦作用がある。
次に、心には神を蔵するとは、心が精神活動の中心であるということである。「清は神志をつかさどる」「信徒は君主の官、神明ここより出ず」[素問[霊蘭秘典論篇]より]とされている。現代では脳が精神活動を行っていると考えられているが、東洋医学では脳は奇恒の腑であり、四肢などを支配するとされていて、精神活動を担うとされたのは清の時代以降である。また、心臓移植した人にはその人の記憶が乗り移ったり、脳点という部位は心臓にあるので、荒唐無稽というわけでもないらしい。
「汗は心の液」「華は顔にある」「心は舌に開竅する」と言われるように、心は汗、顔、舌と関連性が深い。汗は血から作られることを考えればわかりやすいと思う。顔は血色が変わりやすいことから、心の不調を見やすいとされている。また心は肝との関連性が高いので、肝の不調には影響を受けやすい。心は症状の種類が多いが、精神活動や記憶力、睡眠に関連することがあれば、心の不調も視野に入れていきたい。