「椿姫、こんな時間にどうしたんだい?」 「ちょっと話したいことがあるので、私の部屋に来てもらえませんか」 そういった彼女の顔は、ひどく落ち込んだ様子だった。立ち話で詮索していい内容じゃないと思い、誘われるがままに椿姫の部屋に入る。 女の子の部屋。まさにその言葉を体現するような内装だ。若葉を象徴するような緑の明るいカーテン、切れに整理整頓され使いやすくされた机と本棚、かわいらしい模様のベッドシーツ、そしてなにより、ベッドの上で寝ているカワウソのぬい
新しい朝は、眩しい朝日と共に始まった 「眩しっ」 思わずそんな言葉が口からこぼれた。まぶたを閉じていてもわかるほどに、眩しい紫外線が眼球を貫く。二度寝を諦めて起きてスマホの時計を眺めると、もう8時になっていた。窓の外では日が少し上がってきていた。 「もうこんな時間か」 もう少し部屋に粘ってから、下の階に降りようと思っていたけど、 「朝ごはん食べちゃうよ~」 と、下から呑気そうな声が響いたから、さっさと朝ご飯を食べに降りることにした。 スマホの時計の上のカ
私はただ一人しかいないゼミ室で淡々と数学をやっている。安直にやっていると書いてしまったけど、これを表す言葉っていうのは、なかなか見つからないんだ。勉強しているかといえば、嘘ではないような気もするけれど、学校で教えてもらうようなものとは違う。それに、研究と言ってしまうと、もういなくなってしまった先輩がやっていたようなスマートなものを思い浮かべてしまうから、それも当てはまらなくなってしまう。だから、数学をやっているとしか言えないんだ。 気が付いた
晴翔の一番の友人で理解者。多分名字は作中に登場していない。 頑張ればちょっとした豪邸が建つぐらいの裕福な家の生まれ。父親が医師だがあまり家に帰ってこないので関わりが少なく、母親とは親しい。 母親がバイオリンやピアノの楽器ができる他、料理もお菓子作りも上手。美雪はそれを真似しようとしている。ただし運動はふたりとも苦手。 将来の夢は父親の後を継ぎたいが、教師も経験したいと思っている。そのため勉強は怠らないし、桃花と晴翔に勉強を教えるのは彼女にとっては
一人の家でベッドに入って寝ることにも慣れてしまった。昔はお母さんがいないと寝られなかったのに、今は当然のように熟睡できる。そう思っていた。 美雪の社会の課題が終わってからベッドに入って電気を消した途端、心臓の鼓動が急に早くなった。とっさにスマホを取って俊に電話をしようとして、彼に振られたことを思い出す。 そうだ。最近一人でこの部屋で寝られるようになったのは俊と寝落ちで電話をしていたり、遊んでいたからだった。それまではまともに値付けないことなんて