関わりたくない過去

二週間ぶりに病院に向かいながら考える。そういえば、僕の寿命は予定ならあと一週間と少しのはずだ。そもそも僕自身はその現実からずっと目をそらして生きてきた。本当にこのまま死ぬのか不思議なぐらいだった。 いや、強がってもいられないんだろうな。事実、僕は体調が悪化している兆候は何回も感じていた。ただ、僕自身がほとんど動く人間ではなかったので、体に負荷がかかることがなかったからその兆候が表れにくかっただけなんだ。 今の僕にはこのかばんはちょっと重すぎた。

嫌いな人

ブログを書き終えてパソコンを閉じ、もう一度さっきまで説いていた問題を思い出す。なんとなく解き方が思いついて解き始めようとしたとき こんこん ノックの音が部屋の中に響いた。この部屋は僕の部屋だから、朴以外の来客ではないのは確かだ。それでも僕は何かの間違いだと信じたが、むなしくも 「久しぶりだな、翔」 大嫌いな奴が扉から顔を出した。 寝てるふりをしたら帰ってくれないかと思い、ベッドに寝てみたが 「実の父親が来たのに狸寝入りなんてよくないぞ。ほら」 と言って起

始まりは唐突に

僕はいま、入院している。遺伝性のマルファン症候群の一つである、大動脈解離という難しい心臓病のせいだ。中学三年の中盤の頃、別の理由で定期検診を受けに行った際に、医師の気まぐれで検査を受けて見つかった。 しかも、症状は少し進んでいて、その時から、安静にと言われていた。しかし、医師の言うことを聞かず、運動していたら、危険値に達してしまった。 それでも、手術だけは断り続けた。自分の体を人にこじ開けられて、改造されるのが嫌だったからだ。普段は、#我儘__

情報を求めて

ノックされたとの報を見ながら、その奥にいる人物を予想した。この家にいるのはたった三人なんだから、二択しかない。しかも、僕の部屋に入ってくるような人物はあの人だろう。そう思って、僕は戸を開けた。 僕の予想とは裏腹に、ドアの奥に立っていたのは椿姫ではなかった。 「翔、ちょっとしたの部屋に降りてこれる?少し話がしたいのだけれど」 暗がりに映る小百合さんはいつも以上にきれいに見える。京町美人のような風貌が感じられる。 僕は驚生きながらも、小百合さんに言われ

人のふり見て…

次の日。僕は、自分の体調があまりすぐれないので、病院に向かった。今日は、学校帰りだったけど、暁さんはついてきていない。いつもなら一緒に行くところだけど、今日は僕の診察だけの予定だから、先に帰ってもらったんだ。 今日は雨がずっと降っていて、とても憂鬱な気分だった。雨のせいで、数十メートル先さえもまともに視認できない。梅雨の中でも、かなり強い雨で、傘がいまにも手から落ちそうなほどだった。雨の少し酸味のある匂いが空気を汚染していて、薄暗い気持ちに拍