桜舞う小道の下。 「本当に先輩は行ってしまうんですか?」 涙ながらに私は先輩の裾をつかみながら訴えかけた。でも、先輩はただ黙って、私と同じように泣きながらいうのだった。 「僕が僕であるために、僕はもう巣を離れるんだ。もしかしたらまたいつか会えるかもしれないから、その日を待つことにしようよ」 と言い残すと、私の唯一の先輩はゼミ室を出て行ってしまった。そうして、私はこのオイラー部の最後の部員になってしまったんだ。「お邪魔します」 そう言ってもう見慣れた黒瀬さんの家に一歩踏み入った。本当は黒瀬さんをここまで届けたら帰るつもりで一緒にエレベーターに乗ったけど、黒瀬さんが少しくらい寄ってけばなんて言うので甘えてしまった。傘をさしていてもびしょ濡れなことに変わりはないし、少しの間だけでもブレザーとブラウスを乾かせたら、この気分も晴れるかもしれない。 「シャワー浴びてくるから、適当にしてて」 「黒瀬さんの後、私も入っていい?」 「勝手にすれば」 黒瀬さんはそう言いなが「え、今日のお願いはそれでいいの?」 勉強が終わった後、広岡さんに今日のお願いをした。それは昨日のことのお礼もかねて、お夕飯をご馳走しようと思ったのだ。 「嫌なら帰れば? どうせレトルトだし。」 「黒瀬さんからのお願いだからもちろんやるけどさ。貰い物なんでしょ?」 広岡さんは少し眉根を寄せて私のスクールバッグからはみ出ているビニール袋を指さした。 「いい。なくなったらまた買い足すだけだし。」 そっか、というと広岡さんは自分の勉強道具を片付けて立ち上がった「おかゆと卵も買っておいたほうがいいかな。」 近場のスーパーで黒瀬さんの食べられそうなものや看病に必要そうなものをかごに入れていく。買い出し自体は家族のために週に何回も行っているから、棚の奥のほうから物を取ったり重いものをかごの下のほうに入れたりする癖が染みついている。でも 「なんで私、ここまでしてるんだろう。」 椿姫や悠楓のために看病したりご飯を作ったりするのは、私の義務だからやっている。でも、黒瀬さんのための買い出しは私がやる必要はないはず。うまくいかない日。朝から寝坊をしてお昼ご飯を買いに行けず、教科書を忘れた授業で当てられ、お昼休みにさやが遊びに来なかった。さっさと家に帰って鍵をかけ、ゆっくり音楽をかけながら小説を読みたいような日に限って、広岡さんの家庭教師が入っている。 空腹でいつも以上に長く感じた授業が終わり、寒さで重くなった頭を引きずるようにして学校を後にした。音もなく時間は季節を追い越していく。時々強く吹く北風が隣の人のマフラーをたなびかせるのを見ながら、家に置いてき