会えない人

想定通り、まだ夜明けも迎えていない午前4時半過ぎに目が覚めてしまった。まだ椿姫や小百合さんは起きていないだろうし、いつものようにインスタントのコーヒーはない。布団をかぶったまま、眠い目をこすって机に向かう。 適当に数学の問題集を引っ張り出し、最近解けなかった問題を振り返りながら、夢の内容を思い出す。夢を見るたびに、内容を咀嚼する。 昔に比べれば再現度が落ちたのは明白だ。そして、最後まで見終わらないうちに起きることが増えた。それは夢から無理やり目

休日の塾

「はぁ」 私は朝から深いため息をついた。なぜなら、全くもって八雲くんが起きないからだ。私のカレンダーを知っているから、今日は塾があることを知っているはずなのに。朝ごはんをの準備もできないから、本当に困る。遅刻寸前の時間まで舞ったけど、起きる気配は未だにない。 「もう仕方ないか」 と言い残して、彼にメールを送り、家を出ることにした。今はまだ朝の八時。しかし、塾の予定が入っているので、どうしても行かなくてはならない。塾は駅の近くにあるので、そんなに遠

救う勇気

そのあと、僕らは買い物をしたり、ごはんを食べたりした。ただ、僕にとっては、その光景すべてが、見るに堪えがたい光景だった。暁さんの様子が、どうしても見ていて、居ても立っても居られない様な気持ちにさせられた。それなのに、一切言葉も行動もできない自分がいた。そんな自分が恥ずかしかった。だから、僕はここですべてを伝えようと思った。 それは、病院の後ろにある小さな原っぱ。夜になると、美しい星々が良く見える場所。まだ元気だった頃に何度も病院を抜け出しては

見て見ぬふりの過去

家に帰る道中、少しだけ僕らは収穫を分かち合った。僕が分かったことは、あの家は結局あのままあいつが住んでいるだろうということ、そして、あの家のものはほとんど変わっていなかったこと。椿姫は僕の家と彼女の家が似ていることを話した。 駅周辺までついたところで、僕は椿姫に一つ聞いた。 「入ってすぐに二階に行ったけど、何かあった?」 椿姫は少し肩を震わせたようにしてから、 「ちょっと今は…」 そこまで言うと、口をつぐんでしまった。単なる疑問にすぎな

幸せを求めて

引き抜くところまではできたが、点滴を固定していたバンドがうまく外せないでいると、親父がさっと外してくれた。そして、僕の腕を見ながら言った。 「あと十分ていどかな」 あと十分。それが僕のタイムリミットだ。正直足りるか怪しいが、やってみるしかない。 歯を食いしばってベッドから起き上がろうとした。しかし、足の力が足りなくて、しゃがみそうになったところを、親父が肩を貸してくれた。親父の肩を借りながら歩く感覚を思い出していると、親父は何やらポケットから薬を