五話目

慣れてしまうと、高校の授業時間なんて一瞬で過ぎ去ってしまう。今日の授業は一限から英語、数学、歴史総合だ。英語の授業は先生が黒板に英文を書き写すだけで授業の半分ぐらいの時間がたっている。残りの時間は、その英文を和訳したり音読したりするだけの平凡なもの。教室を見渡したり、教科書の読んでいない文章を読んでいたらあっという間に終わってしまった。 ほかの科目も、先生たち特有の授業を展開してくれるので、それぞれこんな授業だったなぁと思いだしていると時間が

愛ある人

懐かしいリビングの香り。解像度は日に日に低くなっているけれど、僕が住んでいた家のにおいだ。そして、それは僕のお母さんの好きな匂いなんだ。 いつものように水を飲み終えて、勉強部屋に戻ろうとしたとき、玄関の扉が開いた。出てこないでくれと望んでいても、やはりその男の声は聞こえてきた。 「翔、いるか」 もう僕の頭の中ではあの家の間取りは忘れてしまったのだろうか。玄関の位置も正しくないし、声が聞こえる方向もあっていない。けれど、これから起こることだけは明確

一人ぼっちの休日

次の日の朝、少しでも長く寝ようと思ったため、起きたのが8時ごろだった。7時間の睡眠だから十分のはずだけど、病院生活の時と比べると、すごい短く思えてしまう。だるい体を起こして、自分の部屋の窓を開けて、下の階に降りた。 暁さんの姿はなかった。一瞬、また寝坊かなっと思ったけど、今日は自分が寝坊しているのから、それは無いはず。もしかしたらと思ってカレンダーを確認してみたら、 「一日塾」 と書いてあった。今の時代、高校受験に塾はつきものらしい。通わない人が

時の流れは絶えずして

あのバレンタインの後 僕らは、これまでで最高の日々を送った。 僕らは、ともに第一志望の高校に合格できた。本番が弱い僕にとって、第一志望に合格できて、本当にほっとした。合格発表の後、彼方に報告しに行くと 「これで安心したよ」 と言っていた。そのあとに、二人で久々の焼き肉をして楽しんだ。 無事に進学先も決まり、僕らは三年生送る会、通称三送会に向けて頑張った。三送会の練習自体は、前から始まっていた。でも、受検が残ってる間はどうしても身が入らなかった。これで

正解を求めて

「そういうことだったのか」 僕の頭の中で、消え失せていた記憶が取り戻された。わからなかったこと、推測できなかった謎、そのすべてを埋めてしまうパーツが見つかった。ちょうどそれを見計らったように、病室の扉があいた。その先の人物は見なくてもわかった。 「そこまで読んでいたんだな、親父」 僕が声をかけると、二や着いた様子の親父が病室に入ってきた。何も言わずに僕の隣の椅子に腰かけると、僕のほうを向いていった。 「間違った選択肢をふんだんだな」 けらけらと笑いな