休日の塾

「はぁ」 私は朝から深いため息をついた。なぜなら、全くもって八雲くんが起きないからだ。私のカレンダーを知っているから、今日は塾があることを知っているはずなのに。朝ごはんをの準備もできないから、本当に困る。遅刻寸前の時間まで舞ったけど、起きる気配は未だにない。 「もう仕方ないか」 と言い残して、彼にメールを送り、家を出ることにした。今はまだ朝の八時。しかし、塾の予定が入っているので、どうしても行かなくてはならない。塾は駅の近くにあるので、そんなに遠

救う勇気

そのあと、僕らは買い物をしたり、ごはんを食べたりした。ただ、僕にとっては、その光景すべてが、見るに堪えがたい光景だった。暁さんの様子が、どうしても見ていて、居ても立っても居られない様な気持ちにさせられた。それなのに、一切言葉も行動もできない自分がいた。そんな自分が恥ずかしかった。だから、僕はここですべてを伝えようと思った。 それは、病院の後ろにある小さな原っぱ。夜になると、美しい星々が良く見える場所。まだ元気だった頃に何度も病院を抜け出しては

見て見ぬふりの過去

家に帰る道中、少しだけ僕らは収穫を分かち合った。僕が分かったことは、あの家は結局あのままあいつが住んでいるだろうということ、そして、あの家のものはほとんど変わっていなかったこと。椿姫は僕の家と彼女の家が似ていることを話した。 駅周辺までついたところで、僕は椿姫に一つ聞いた。 「入ってすぐに二階に行ったけど、何かあった?」 椿姫は少し肩を震わせたようにしてから、 「ちょっと今は…」 そこまで言うと、口をつぐんでしまった。単なる疑問にすぎな

幸せを求めて

引き抜くところまではできたが、点滴を固定していたバンドがうまく外せないでいると、親父がさっと外してくれた。そして、僕の腕を見ながら言った。 「あと十分ていどかな」 あと十分。それが僕のタイムリミットだ。正直足りるか怪しいが、やってみるしかない。 歯を食いしばってベッドから起き上がろうとした。しかし、足の力が足りなくて、しゃがみそうになったところを、親父が肩を貸してくれた。親父の肩を借りながら歩く感覚を思い出していると、親父は何やらポケットから薬を

人の話を聞く非日常

一呼吸おいた僕は、あの日のことを語り始めた。 「お母さんの様子が変わってから、半年ぐらいたったころ。急にあいつとお母さんが一緒に家に帰ってきたんだ。ちょうど水を飲み終えたタイミングでね。普段帰りが遅いあいつが早く帰ってきたってだけでも、驚きでいっぱいだったのに、そのあとあいつは僕に言ったんだ。僕らは離婚するってね。」 あの日のことを思い出すとやっぱり涙が出そうになる。けど、話すと決めたなら我慢して最後まで話さないと。その決意で涙を押しとどめなが