絶望の底に叩き落されて

今何時なんだろうか ふと気になって腕につけていた時計を見ると、もう新しい日を迎えようとしていた。それまで、ずっと彼方の手を握っていたのか。 なかなか長い時間だった。まあ、たまにお茶を飲んだり、軽食を取ったりはしていたけど。それでも、一人のことをこれ程長い時間の間考え続けるというのは、容易いことではない。 僕はもう一度彼方の手を強く握る。もう一度だけでも、話をしたいと願いながら。一言伝えたいこと、相談したいことがあるんだ。 その時、わずかに感じたぬく

面影感じる人

いつ追い出されてもいいようになるべく必要な荷物だけを取り出し、まだ使わないものは段ボールに残しておいた。一通りの準備が終わると部屋の中を見渡してみる。何度見ても違和感がぬぐえない部屋だった。 荷物の中から取り出したパソコンを机にセットする。コードをつなぎディスプレイのとキーボード、マウスの位置を整えいつでも使えるようにする。動作確認もかねて少しだけブログを書いておくことにする。 この二日間でいろんなことが起きすぎて、自分の頭の中でまとめきれない

立ち向かうべき過去

僕は今日の夢の話しから、小百合さんと柳田医師に言われたこと、そして僕の家について話した。椿姫は最初の夢の話はさもつまらなさそうに聞いていたものの、最後の家についてはなぜか興味ありげに聞いていた。 「ということなんだ。どうするのがいいんだろうか」 率直に僕は問いかけた。年上の僕がこんなことを椿姫に聞くのはおかしな話だ。けれども、今の僕にはただ人に聞いて答えを得たいという面があったのかもしれない。そんな僕の質問に、椿姫は予想外の答えをした。 「そこま

爆発する指数

ホワイトボードを背にして、雅君の方を向きながら解説モードの私は雅君に問う。 「この中でも、今日は指数について勉強しようか。指数っていうのがどの部分かはわかるよね?」 雅君は、特に引っかかることもなく答えてくれた。 「$e^{i\theta}$の部分かな。」 と答えてくれた。その部分だけ抜き出してホワイトボードに書くと、話を進めるためにも、指数法則とその横に書いて話を始めることにした。 「中学校だと、指数ってなんて習う?」 「かける個数って習いました。だ

佑月 俊

本作屈指のクズ男こと俊。多分読者の大半から嫌われている。 ごく平凡な幸せな家庭で生活しているはずなのにあまり家庭の幸福さを理解していない。父親に対して強いコンプレックスがあり、華族のことが好きでないので家にあまり寄り付かない。 頭はあまりよくないが、自分は天才だと思い込んでいる。この高校に来たのも身の丈に合わない高校に落ちてたまたま受かっただけ。 バレーボールが無類に好きで中学生のころから没頭していた。しかし、新入生歓迎に失敗して部員がいなくなっ