久しぶりの買い物

朝は何度でもやってくる。 暁家に来てから、とにかく寝覚めが最高になったと思う。まず布団がいい。 とにかくいつも、ふかふかしていて、寝心地がとにかく。そして、枕もいい。 へなへなな枕ではなく、しっかりとしているんだ。暁家の寝具は、最高の睡眠と最高の寝覚めを提供してくれている。そのおかげで、前まで嫌いだった朝が、好きになれそうな勢いだった。 朝は、貧血かつ低血圧の影響で、フラフラになってしまうから、嫌だった。まず寝起きの瞬間に立ち眩みが起きるし、その後

幸福のバレンタイン

日が地平線の少し上くらいまで傾いた頃、僕はまだ暇を持て余していた。渡すべきチョコは既に用意できている。だから、渡す相手の暁さんの帰りを、ただひたすらに待ち望んでいた。すると、スマホに連絡が入った。 「そろそろ家に着きます」 と、暁さんから届いた。 チョコの渡すタイミングは、暁さんが、帰ってきたあと少し落ち着いてからがいいと思う。そうはわかっていても、とっとと渡してしまいたくて、うずうずしていた。チョコを渡すっていう動作がこんなにも恥ずかしいとは思

書店とカフェの非日常

いつものように駅に着いたけれど、まだ椿姫からの連絡はない。スマホで人と連絡するというのがいまだになれないので、連絡が来てないか各省が持てないから、常にスマホを注視している。 そういえば、入院してからは連絡はパソコンでしていたから、スマホを使うのは音楽を流したり動画を見たり、タイマーとして使うぐらいのことしかなかった。今にして思えば、そのどれもスマホである必要はなかったんだけど。 時計を見ると、そろそろ椿姫の授業が終わってもおかしくない時間帯にな

小康を求めて

長い 長い夢を見ているようだった。 いや、何が夢なのかわからなかったけれど、ただこの瞬間が幸福なのだということだけはわかっていた。 気が付いたら壮大なネモフィラの花畑の上に立っていた。見渡す限りただ広く、地球よりも宇宙よりも広い青い草原、そこに洋風の風車がたっていた。 仏教でいえば極楽というのはまさにこういうところなんだろう。きっとこれまでの現実はある種の夢の一つだったのかもしれない、そう感じてしまうほどに、暖かく僕を受け入れてくれる草原だった。 少

絶望の底に叩き落されて

今何時なんだろうか ふと気になって腕につけていた時計を見ると、もう新しい日を迎えようとしていた。それまで、ずっと彼方の手を握っていたのか。 なかなか長い時間だった。まあ、たまにお茶を飲んだり、軽食を取ったりはしていたけど。それでも、一人のことをこれ程長い時間の間考え続けるというのは、容易いことではない。 僕はもう一度彼方の手を強く握る。もう一度だけでも、話をしたいと願いながら。一言伝えたいこと、相談したいことがあるんだ。 その時、わずかに感じたぬく