始まりが大切

私はただ一人しかいないゼミ室で淡々と数学をやっている。安直にやっていると書いてしまったけど、これを表す言葉っていうのは、なかなか見つからないんだ。勉強しているかといえば、嘘ではないような気もするけれど、学校で教えてもらうようなものとは違う。それに、研究と言ってしまうと、もういなくなってしまった先輩がやっていたようなスマートなものを思い浮かべてしまうから、それも当てはまらなくなってしまう。だから、数学をやっているとしか言えないんだ。 気が付いた

第13話

天気予報の降水確率10%なんて表現はずるいと思う。数歩先の看板すら見えないような大雨も10%で当たっていることになってしまう。間違っていたとしてもレストレード警部くらい堂々と間違えてくれたほうがまだましだ。 高校に決められた模試のせいで、週末に行ったことのない街の大学の広い教室で、知らない高校生たちに混ぜられてテストを受けさせられた。前に座った人の座高が高いせいで時計が見えなくて、名前を書き損ねて呼び出された。こんな日はさやと一緒にゲームセン

第10話

「先に飲み物だけ持ってきたよ。」 やかんで沸かしたお湯を水と合わせて白湯にして、さっきと同じ味付けをしたものを黒瀬さんのもとまで運んだ。買い物に行く前とは打って変わって、ドアに背を向けてカワウソを抱きながら分厚い漫画雑誌のページを行ったり来たりしていた黒瀬さんが、寝返りを打って私のほうを見ると飲み物を奪うようにとって飲んだ。その時に黒瀬さんの額にシートを貼り忘れたことを思い出した。 ちょうどいいと思ってちゃぶ台に放置されていたシートの箱から一枚

第3話

広岡さんの家庭教師が始まった次の日も学校はそう変わらなかった。朝、登校した時に畠さんに少し絡まれた程度で、それ以外の厄介ごとは起こらなかった。おかげで、参考書の昨日広岡さんに音読させた部分を読み直す時間も取れた。 普段は窓の外に向かう視線が、今日は自然と広岡さんの背中に向かう。前から2番目の席で畠さんの後ろに座る彼女は窓際の席からでもよく見える。教室ではブレザーを羽織る生徒も増えてきたけれど、広岡さんはブラウスにカーディガンを重ねていた。いつ

姫野 美雪

晴翔の一番の友人で理解者。多分名字は作中に登場していない。 頑張ればちょっとした豪邸が建つぐらいの裕福な家の生まれ。父親が医師だがあまり家に帰ってこないので関わりが少なく、母親とは親しい。 母親がバイオリンやピアノの楽器ができる他、料理もお菓子作りも上手。美雪はそれを真似しようとしている。ただし運動はふたりとも苦手。 将来の夢は父親の後を継ぎたいが、教師も経験したいと思っている。そのため勉強は怠らないし、桃花と晴翔に勉強を教えるのは彼女にとっては