「はぁ」 私は、いつものように朝の支度をしていたが、なかなか蓮が起きてくれない。全く、受験が終わったら、気が抜けたのだろうか。何度か起こしてみたのだが、朝ごはんを食べに来る様子はない。この調子だとちょっとまずい。何がまずいかといえば 今日は、バレンタインデーなのだ。 バレンタインだから、チョコを作ろうと思って予定を立てたんだ。朝起きて、早めに朝ご飯の支度を済ませておく。そして、蓮をとっとと病院に送りだす。病院に行く予定があることは、元から知ってい言葉に表せないような、もやもやを抱えたまま僕は矢田部家に着いた。ふと、矢田部家を見て、少し僕の家に似ていることに気が付いた。あまり意識していなかったけれど、家の作りや路地への向き、そして何より門の構え方が似ていた。どおりで僕はこの家が何となく落ち着いていると思ったんだ。 僕は矢田部家に帰ると、手を洗って自分の部屋に戻った。珍しく小百合さんは出かけているらしい。不思議に思ってスマホを見ると、小百合さんが家族用のメッセージで家を空けることを書いていつ以来だろうか。僕は悪夢を見ることなく睡眠から覚めることができた。この数日は亜空が薄まったという印象はあったものの、常にあの夢を見ていたんだ。しかし今日は一切その夢を見ることなく起きることができた。 「う~ん」 悪夢を見なかった事はいいことのはずなのに、どうもすっきりしない。昨日の昼寝で見た夢のせいもある。あの時に見た世界は、“僕"は結局何ものだったのか理解できなかった。謎を残したままいなくなられるほうがよっぽど困る。 と「お邪魔します」 と言って、暁家に足を踏み入れた。まずは靴を脱いで、玄関先から上がった。暁さんは、僕のあとに家に上がるとすぐに、玄関の電気を付けると、靴を脱いで、リビングらしいところに行ってしまった。あとを追うようにリビングに入ろうとしたけど、入室が寸前で止められてしまった。 仕方なく廊下を見渡すと、洗面所らしい部屋を見つけた。人様の家に上がっておいて、手を洗わないのは汚いと思って、洗面所を借りた。蛇口周りは丁寧に使われているからか汚れもなく、次の日 いつもより悪い寝覚めで、日の光を正面から浴びた。時計を見れば、もういつもの起床時間だった。 「ふわぁ~」 やはり、降圧剤の量が増えたせいで、さらに朝に弱くなってしまった。低血圧にとっては、朝はつらいんだ。体に血が廻らない感じがする。鉛のように重い体を、無理に動かして下の階に降りる。すると、朝が得意な暁さんは、もう朝ごはんの準備をしていた。 「あ、蓮おはよー」 僕がリビングに入るのを感じ取ると、暁さんが僕に声を掛けた。僕は眠気のせいか、少し反応