自分の部屋に帰ってきてから、やらなければいけない採点を始めた。早く寝ないと、明日の勉強に支障が出てしまうので、できる限り早くバツ付けをする。間違えた部分だけ印をつけておけば、採点には十分だし復習もしやすい。 今日は少し問題を解きすぎたのかもしれない。後悔してしまうほど、採点に時間がかかってしまった。八科目全部の採点が終わるころには、一時間近く立ってしまっていた。しかし、さっきまでの眠気は飛んでしまった。なぜなら 「この点数じゃまずいかもな」 目標
「はぁ」 私は、いつものように朝の支度をしていたが、なかなか蓮が起きてくれない。全く、受験が終わったら、気が抜けたのだろうか。何度か起こしてみたのだが、朝ごはんを食べに来る様子はない。この調子だとちょっとまずい。何がまずいかといえば 今日は、バレンタインデーなのだ。 バレンタインだから、チョコを作ろうと思って予定を立てたんだ。朝起きて、早めに朝ご飯の支度を済ませておく。そして、蓮をとっとと病院に送りだす。病院に行く予定があることは、元から知ってい
言葉に表せないような、もやもやを抱えたまま僕は矢田部家に着いた。ふと、矢田部家を見て、少し僕の家に似ていることに気が付いた。あまり意識していなかったけれど、家の作りや路地への向き、そして何より門の構え方が似ていた。どおりで僕はこの家が何となく落ち着いていると思ったんだ。 僕は矢田部家に帰ると、手を洗って自分の部屋に戻った。珍しく小百合さんは出かけているらしい。不思議に思ってスマホを見ると、小百合さんが家族用のメッセージで家を空けることを書いて
いつ以来だろうか。僕は悪夢を見ることなく睡眠から覚めることができた。この数日は亜空が薄まったという印象はあったものの、常にあの夢を見ていたんだ。しかし今日は一切その夢を見ることなく起きることができた。 「う~ん」 悪夢を見なかった事はいいことのはずなのに、どうもすっきりしない。昨日の昼寝で見た夢のせいもある。あの時に見た世界は、“僕"は結局何ものだったのか理解できなかった。謎を残したままいなくなられるほうがよっぽど困る。 と
「お邪魔します」 と言って、暁家に足を踏み入れた。まずは靴を脱いで、玄関先から上がった。暁さんは、僕のあとに家に上がるとすぐに、玄関の電気を付けると、靴を脱いで、リビングらしいところに行ってしまった。あとを追うようにリビングに入ろうとしたけど、入室が寸前で止められてしまった。 仕方なく廊下を見渡すと、洗面所らしい部屋を見つけた。人様の家に上がっておいて、手を洗わないのは汚いと思って、洗面所を借りた。蛇口周りは丁寧に使われているからか汚れもなく、